「俺に任せろ! 俺についてこい!」
明治初頭、大阪商工会議所。時代の転換期に職を失った商人たちが怒号を上げる中、三浦春馬さん演じる五代友厚はただひとり、鬼気迫る表情で言い放つ。名誉のためではない、市民の未来のために。商人として成功した彼を信じる者はいない。しかし、五代はそれを現実のものにする。
「五代は今より未来を見つめ、金より情を、利己より利他の精神に生きた男。世界に誇れる美しい日本人の心を持ち、現代日本の基礎を作り出した男です」
と、『天外者』の田中光敏監督。五代友厚の生涯を映画化するにあたり、「彼しかいない」と直感したのが三浦春馬さんだった。
現場のスタッフも僕も泣いた
「春馬さんは今も戦っている」と、田中光敏監督 撮影/高梨俊浩
「彼は多忙だから、OKをいただいてから会うまでにずいぶん時間がたってしまって。キラキラしたまっすぐな目で、“いっぱい勉強しました。五代って面白い人ですね”と言われました。
彼は書物を読むだけじゃなく、鹿児島や長崎にも五代を感じに行っていたようです。そのあとも、クランクインまで1年以上もあるのに、毎週のように“五代の殺陣は薩摩藩がやっていた殺陣をリアルにやるんでしょうか?”とか、どんどん僕に質問をぶつけてきました」
子役から20年余り芸能界を走り続けてきた彼が、なぜここまで純粋で真摯な心を持ち続けることができたのか。田中監督は直接、本人に尋ねた。
「クランクアップ間近、ふたりで食事に行ったときに“春馬くんはどうして、そんなにまっすぐなの? どうしてそんなに汚れてないの?”って聞いたんですよ。そしたら“いやいや、そんなことないですよ”って言いながらも“物事に対して一生懸命頑張ってやっていたら、今みたいになっちゃいました”と笑っていました。
きっと、いろんな葛藤を持ちながら日常の中で、自分のやりたいことをひとつずつ成し遂げていったんだと思います。そういう覚悟とか思いの強さ、まじめさ、謙虚さとか、そういうものがいっぱい彼の中にあった。五代と重なるところが多かった」
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