テレビ各局の人気番組がラインナップされ、激戦が続く日曜20時の放送枠。その中で最近、注目を集めるのが『バナナマンのせっかくグルメ』(TBS系)だ。かつては同じ枠の番組に起用されながら放送終了の憂き目にあったバナナマンだが、それでも今も支持される理由とは? コラムニストでテレビ解説者の木村隆志さんが解説する。 【写真】白シャツがおしゃれでイケメンなバナナマン設楽
* * * 日曜20時台の番組と言えば、全曜日全時間帯でナンバーワンの激戦区。大河ドラマ『麒麟がくる』(NHK)、『世界の果てまでイッテQ!』(日本テレビ系)、『ポツンと一軒家』がそろい、最もハイレベルな視聴率争いを続けています。 しかし、その3番組にジリジリと近づきはじめているのが『バナナマンのせっかくグルメ』。視聴率は一般的な合格ラインとされる個人6%、世帯10%を上回る機会が増えているのです。 また、好調の証と言えるのは放送時間。これまでは『坂上&指原のつぶれない店』と交互に18時30分~21時の2時間半特番を隔週で放送して3番組に対抗してきましたが、このところ20~21時の通常放送、すなわち真っ向勝負の形が増えています。 今では忘れかけられていますが、もともと日曜20時台はTBSにとっての鬼門。2010年代は低視聴率で次々に番組が打ち切られたほか、『珍種目No.1は誰だ!?ピラミッドダービー』と『消えた天才』がBPOから放送倫理違反と判断され、終了を余儀なくされる苦境にあえいでいました。 しかもバナナマンは両番組に出演するという不運に見舞われていたのです。それでも2人は、めげるどころか3度目の挑戦となる『バナナマンのせっかくグルメ』の視聴率や評判を上げ、TBS20時台の救世主となりつつあります。同番組とバナナマンは、どこが支持されているのでしょうか。
自然なリアクションだからおいしそう
まず『バナナマンのせっかくグルメ』が支持されている理由は主に2つ。 1つ目の理由は、バナナマンの2人が見せる徹底した明るさと謙虚さ。毎回主に日村勇紀さんが全国各地をめぐっていますが、「お邪魔させていただきます」「来られてうれしい!」「よかったらおすすめのグルメを教えてください」「ありがとうございます」「急で申し訳ございませんが、取材させていただけませんか」「最高においしそう」「本当にうまい!」「ごちそうさまでした。また来させてください」という腰の低さがあり、その上で名物料理を食べられた喜びを爆発させています。 一般人以上に礼儀正しく、地元住民への配慮を忘れないのは、スタジオで見守る設楽統さんも同じ。まるで自分がロケをしているように、「教えてください」「ありがとうございます」などのコメントをはさんで日村さんの姿勢とシンクロさせています。 2つ目の理由は、自然なリアクションをベースにした食事シーン。主に日村さんが担う食事シーンは、よくロケ番組で見られるような食レポとはまったく異なる印象があります。日村さんのコメントは「うめっ」「香りまでおいしい」「こんなの東京では食べられない」などの自然なものばかり。何かにたとえたり、情報を詰め込んだりなど、言葉を重ねる定番の食リポとは真逆のスタンスであり、その自然さがおいしそうに見えることにつながっています。 また、スタジオの設楽さんは、「いいなあ」「食べたい」「うまいだろうな」と、やはり日村さんと同様の自然なリアクション。まるで日村さんとロケをしているようであり、それでいて視聴者と一緒にテレビを見ているようでもあり、親近感を抱かせてくれます。 『バナナマンのせっかくグルメ』が明るさと謙虚さ、自然なリアクションの2点をベースにしたシンプルなコンセプトで放送できるのは、それらがバナナマンの魅力そのものだから。グルメを主役として自分たちは引き立て役にまわり、それでも本当に楽しそうな姿を見せて、視聴者にも楽しさを感じさせているのです。 あまりに明るく楽しそうな姿は、2番組が打ち切られた悲しい過去を感じさせません。同番組は「業界視聴率も高い」と言われていますが、それもバナナマンの魅力を生かしたシンプルなコンセプトで放送しているからでしょう。
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