手前がタイプ992と呼ばれる最新のポルシェ911カレラ4S。奥が尾花さんの1992年型ポルシェ911カレラ2(タイプ964)。両者を比べると、安全性や快適性を確保するために、新型は全長で約27cm、全幅で約19cm拡大している。3ℓ水冷ターボエンジンの新型の最高出力は450ps。3.6ℓ空冷NAエンジンのタイプ964は250ps。
© HIROSHI KUTOMI
劇的に進化した性能と、頑なに変えないこだわり
最新のポルシェ911カレラ4Sを1週間にわたって試乗したN.ハリウッドのデザイナー、尾花大輔さんは、「僕の(タイプ)964とは別次元だったので、ちょっとおもしろかったですね」と切り出した。タイプ964とはポルシェ911の開発コード。ポルシェ911は世代によって性格が異なるので、〝通〟は開発コードで呼ぶのだ。ちなみに初代から数えて8代目となる最新モデルは、タイプ992と呼ばれる。尾花さんは続ける。
「僕の964は空冷のNA(自然吸気)エンジンで、後輪駆動のカレラ2。試乗したのは水冷のターボエンジンで4駆のカレラ4Sなんですけど、驚くほど印象が違いました」
ここで最新モデルの感想を訊く前に、尾花さんの〝911愛〟を語っていただこう。
「911ってだれでも憧れると思うんです。だけどなぜか僕は、40歳を過ぎてからじゃないと似合わないな、と思ったんです。それで若い頃にはマセラティ3200GTとかに乗って、40歳になったあたりから911を探し始めました。どのタイプにしようか2年ぐらい考えたんですけど空冷(エンジン)ということは決めていて。ファッション業界のポルシェの師匠と出会って、自分が望むスタイルとパフォーマンスは964のカレ2(カレラ2)とわかって探し始めてからは早かったですね。半年ぐらいで見つかりました」
こうして3年前に、1992年型のポルシェ911カレラ2(タイプ964)が尾花さんのもとにやって来た。
「納車された日にはポルシェの師匠とC1(首都高速都心環状線)に行って、ベタですけど大黒パーキングまで往復しました」
といった具合に空冷エンジンのタイプ964との蜜月を送る尾花さんは、最新のタイプ992をどう見るのか。
「まず乗り心地が劇的に快適ですね。あと、びっくりするほど静かです。雨の日に高速道路の料金所でちょっと踏んでみたんですけれど、電子制御のコントロールで何事もなかったように加速しました。これが技術の進歩なのか、すげぇなと感心しました」
ただし、感心こそしたけれど、自分の964と取り替えたいとは思わなかったという。このあたりが、趣味のクルマのおもしろいところだ。タイプ992よりも遅くて、うるさくて、不安定なタイプ964のほうが、尾花さんにはしっくりくるのだという。
タイプ992のドライバーズシートは、モデルチェンジにあたって完全に新設計されたもの。ショルダー部分のホールド性能を大幅に引き上げながら、従来型比で1脚あたり約3kgの軽量化を実現しているという。
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「なぜなんでしょうね……。964のほうがコンパクトだし刺激があるから、運転をしているっていう気になるのかな。去年、自分の964で東京から名古屋まで打ち合わせに行ったことがあるんです。あのときはヘトヘトになって、ああいう使い方だったら最新モデルのほうがいいんでしょうけれど、911を2台持つわけにもいかないですから」
クルマ好きの間で知られている〝最新のポルシェが最善のポルシェ〟という格言めいたものも、尾花さんはもちろんご存じだ。
「クルマをまとうという感覚がありますね」
ホイールベースの2450mmは従来型(タイプ991)を踏襲、全長を20mm伸ばした。フロントの幅は、従来型に比べて45mmワイドになり、それにあわせてトレッドも46mm広くなっている。ちなみに、リアのトレッドは39mm拡大している。搭載するエンジンは水冷の水平対向3ℓターボエンジン。最高出力は、モデルチェンジにあたって30psパワーアップ、450psとなった。
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「ポルシェ仲間でも、新しいタイプ991(2019年まで生産)に乗り換えて楽しんでいる人もいるので、古い、新しいは好みの問題としか言いようがないですね。ただ964に比べて25cm以上長くなっているのに、運転席に座った時のタイト感、クルマをまとう感覚は変わっていません。ドライバーの正面にアナログのタコメーターがくるインパネも同じ。911ってお尻の形が大事だと思うんですけれど、リアのフェンダーのラインもキープしていますね」
尾花さんの話を聞きながら、ポルシェ911は深い、としみじみ感じた。
ボディに一体化されているのでこの状態では確認できないが、走行モードに応じて3つのポジションを取る可変式のリアスポイラーを装備している。カレラ4Sの0-100km/h加速は3.6秒。
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いまでこそスポーツカーのメートル原器と呼ばれるポルシェ911であるけれど、かつては「wrong end」、すなわち「エンジン載せる位置、間違ってんじゃん」と揶揄されることもあった。ボディ後端に重たいエンジンを積むので、一度お尻が流れるとコントロールが難しかったからだ。技術者たちはその弱点をコツコツと改善してきた。
で、古ければ古いほど弱点が顕著だから、不完全な機械を手なずける楽しみがある。対して、弱点をほぼ克服した最新モデルは、完璧な機械にふれる感動がある。
尾花さんは言う。
「古い空冷から入門して最新モデルに至る人もいれば、最新モデルから古いほうへと遡る人もいるでしょうね。かなり違います」
いずれにせよ、最新型と何十年も前のモデルをまともに比べようと思えるクルマは、世界中を探してもポルシェ911だけだ。真に偉大なスポーツカーなのだ。
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Porsche 911 Carrera 4S
現行型のタイプ992がデビューしたのは2018年11月のロサンゼルスモーターショー。911のデビューから55年目のことだった。モデルチェンジにあたっての眼目は、速さの追求とデジタル化。速さについては、ボディを軽くすることと、エンジンのパワーアップで実現。デジタル化は、ダッシュボード中央に10.9インチのタッチパネルを設置して最新のインターフェイスとした。
SPEC
全長×全幅×全高:4519×1852×1300mm
ホイールベース:2450mm
車両重量:1565kg
乗車定員:4名 ¥18,048,148
尾花大輔
N.ハリウッドデザイナー
1974年、神奈川県生まれ。高校時代に古着屋でのアルバイトからキャリアをスタート。2000年にショップ「ミスターハリウッド」オープン、翌01年にはブランド「N.ハリウッド」設立。02年よりコレクションを発表、10年にはニューヨークへ進出した。クルマ好きとしても知られる。
Photos 久富裕史 Hiroshi Kutomi@N°2
Words サトータケシ Takeshi Sato
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May 03, 2020 at 06:00PM
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